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15分小説「取り壊されるまでに」

制限時間:15分 お題:有名な家 必要要素:予想外の展開
2年前くらいのものだと思います。「即興小説トレーニング」というサイトにて、15分きっかりで。

「あの家、取り壊されるらしいよ」
「えっ」
川上が言ったことに、俺は本当に驚いた。
あの家、とは、ちょうど3丁目と4丁目の境にあたる場所にある、古びた日本家屋のことだ。今となっては誰も住んでいない。いや寧ろ、かつて誰かが住んでいたのかもわからないような、廃れた家だ。
「ずっとあるのが当たり前だったから、俺も驚いたよ」
川上はオレンジジュースを飲みながら、感慨深げに言う。他の奴らが「何の話?」と寄ってきたが、川上は「地元民の話だから、お前らにはわかんねえよ」と、しょんぼりしたポーズを少し大袈裟に作った。
「そっか……」
落胆と、少しの焦りが混ざった声が出た。
あの家は、昔、俺たちの秘密基地だった。見慣れない日本家屋の造りや、土足のまま走り回っても誰も怒らない解放感、古びた家具が置きっぱなしになっているので隠れる場所や隠す場所が尽きない楽しさ。それがなくなるのは、子供時代の思い出がひとつ消えてしまうのと同じだ。
「中学生になってから、あそこで遊ばなくなったもんな」
「そうそう。それに、俺の弟から聞いた話だけど、今の子どもたちはあそこで遊べてないんだよ。なんでも、遂に玄関の引き戸の立てつけが悪くなりすぎて、開かなくなっちゃったらしい」
残念そうに、川上は言う。純粋な子供心から残念がっているのがわかって、俺は思わずくすりと笑ってしまった。しかし次の言葉は「……まあ、ああいう所はいかがわしい事に使われる可能性もあるから、取り壊しは犯罪防止になるのかもしれないけど」と高校生らしいというか、嫌に大人らしいようなことを言ったので、「うわ、そういう考えに至るのか、やっぱり」と大袈裟に驚いて見せた。
「至るだろ、そりゃ。高校生だし」と川上は笑ったが、それもまた純粋なもので、俺は、こいつが知ったらどうなるだろうと思った。

さて、どうしたものか。あの家に隠している女の子を。
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