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「いやだ」①

食え、と言われたのでまた口を閉じた。先ほどは喋れと言われたから閉じたのだった。
足立と名乗った、狼のような顔をしたオッサンは、あからさまに大きなため息をついた。
「やめろ。そういう意地の張り合いは何も生まないぞ。自分で死を引き寄せてるだけだ。まださっきの方がわかる。仲間の死を引き寄せたくないんだろ」
足立はパンを床に放った。私に与える食料だろうけど下から見たら何が入っているのかわからない平たい器は、まだ手に持っている。
「私は感謝している」
急に私が話し始めたので、足立は驚いたようだった。私はまだ目を閉じたままだったけれど、空気の揺れ方でわかったのだ。
「今まで私、人を率いたり、自分で人の道を決めたりするのはもちろん、自分で意思をはっきり示したことが少なかった。ううん、少なかったじゃなくて、無かったと思う。でもこうなって、初めて私、自分で意思を示そう、そうしないと何も変わらないと思えた」
そして私は目を開けた。
「喋るのも、食べるのも、いやだ」
足立は驚きと呆れが混ざった表情で、口の端をぴくぴくと震わせた。
「私は私を強くしてくれた足立に感謝してる」
私はまっすぐに足立を見上げた。
「じゃあ俺は」
足立は意外にも、唇の右端をぐっと引き上げた。
「お前が喋らないのも、食べないのも、いやだ」
足立は半分面白そうに言った。
私たちは睨み合った。私は目にあらん限りの力を込めて足立を見上げ、足立はにやついて私を見下ろしていた。
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